妻のトリセツ。
こんなものをパートナーにプレゼントするような人間にだけはなりたくなかった。
一時期えらく売れた本でテレビでも頻繁に紹介され、◯万部売れました!満足度◯%!みたいな車両広告が出ていた。この手の本にはあまのじゃく心全開で反発してしまうし、
そもそも千差万別のはずの人間関係(この本の場合は夫婦)に対して一定の“傾向と対策”で知った風にアドバイスが書かれてることも気に入らない。
だがしかし、結婚9年目の記念日のややネタ切れしてきた贈り物に、私はこれ以外の選択肢が考えられなかった。
夫よ頼む、これを読んでくれと。
断続的に続く小競り合いにもほとほと疲れ、口を開けばケンカが始まるかもと疑心暗鬼に→じゃあしゃべるまいという悪循環で、会話がない熟年夫婦が出来上がる1つのパターンを知る。
まずい。
子供がこっち見て顔色伺ってる。
なんとかしなきゃいけないが、ひとつひとつ妻側の言い分を説明して理解を求めるのは煩わしいし、そんなことしたらまた争いの火種をまき散らしかねない。
しかも相手は私史上最強の扱いにくい人間だ。ただの屁理屈を“常識に囚われないオレの理論”と履き違えるツワモノだ。
なぜ何度言っても洗濯物を裏返しにしたまま出すのかと問えば「本当に汚れているのは汗をかいた裏側のはずだから、あえて裏のまま出しているのだ(ドヤ)」と答える。
「あのね、着るときは表に戻して着るんだし、外に見える面を綺麗にしておきたいよね♡」などと丁寧に切り返せるほど私は優しくない。ただ閉口し、今日も静かに裏返った洋服を一つ一つ戻すのだ。
(こういう例には事欠かないが、あんまり書くと外でイジられるからやめてくれとクレームが入るのでこのへんにしとく。)
とにかく私は疲れたのだ。
この本になんか良いこと書いてあるだろ。中身はよく知らんが読んで悔い改めてほしい、、
という思いから、本来なら気に食わぬジャンルの本が夫の手に渡ったのである。
結果、夫は意外とこの本を読んだ。ゴミ箱に捨てられるかと思ったが、時々手に取っては、感情の読めない顔でページをめくっている。
ふーん。あの本、何書いてあるんだろ、ちょっとくらい読んでみるか。
と今さらながらザッと目を通してみた。(読んでから贈れ、という話だが、、)
そして。
読んで最も感じたのは、
“夫に負けないくらい妻(自分)は面倒くさい存在である”
ということだった。
実はこの感想を持つだろうことはある程度予想していたのだが。
例えばこれ。
なんとまぁ面倒くさい女心。認めたくないがこのような翻訳が必要な言動を自分もしている。
言葉のままの意味で会話が成り立たないなら、イライラギクシャクも当然だし、夫側もまたややこしい思考回路を持っているうちのようなパターンはさらに厄介だ。
ニワトリと卵の大行進。
もはや何が発端でどちらに非があるのかなんて闇の中である。
つまり、この本が暗に言わんとしてるのは
「奥さん、あんたもたいがいにしときなはれ。」
ということであり(これは文中では明言されていない)、
「旦那さん、奥さんの面倒くさいところ、よーくわかった上で接したら良いわ。」
という表向きの主題とセットで受け取るのがたぶん正解なのだ。
もし、夫婦喧嘩対策の新手法を探している方、子供が産まれる(もしくは産まれたばかり)の方がいたら一読しておくと良いと思う。
“ふーん”レベルの本の知識でも、いつか役に立つ時が来るかもしれないですよ。
-------
さて、この本のおかげというわけでは(あまり)ないのだが、長い間くすぶっていたモヤモヤも私の中で晴れつつある。
悩み傷つき、人間の形をしたストレス、みたいになっていた原因の一つは、やはり夫婦で公私を共にしてしまっていたせいな気がしている。
仕事脳と家庭脳をキッチリ切り分けるのはかなり難しいし、夫婦で職場にいる周囲への変な影響は遮断すべきだ。それが通説だからこそ、社内結婚したカップルは部署を離され、経営者の妻の多くは夫と全く違う方向から会社に関わったり、あるいは全く関知しないことが多いのだろう。
「夫の仕事のことは何もわからなくて、、」が実はうまくやる秘訣だったりするのだ。
なので、今いろいろと優先順位の組み替えをしつつ、全体最適のための試行錯誤中。
数年前の自分からすれば、考え方も行動もすっかり変わって、外から見れば“あきらめ”を選択したようにも見えると思うが、諦めるとは本来“明らめる”、真理を明らかにするという意味。
ポジティブに「今はそういう時期」として笑っていられるように、あらゆる選択をできたら良いなと思ってます。
(別に仕事辞めるとかそういうわけではなく、スタンスや考え方の話。なので面白そうなお仕事の話あったら引き続きお声かけ下さい。)
それにしても、この頃“夫婦で営む〇〇店”とか“家族経営の〇〇屋さん”とかへのリスペクトが半端ない。彼らがやってることがいかに難しく努力が必要かをよくわかったから。
行きつけのクリーニング屋でいつも出迎えてくれる夫婦(2人の会話は一切なし)と、今ならきっと仲良くなれる気がするわ。