ライブに出たときの話。
冷蔵庫の中で凍りかけた愛を
温め直したいのにーーー
竹内まりやはうまいこと言う。
愛だけの話ではない。
夢とか趣味とか本質とか、
冷蔵庫の片隅で時が止まっているもの。
大人なら誰しも心当たりがあるんじゃないか。
先日、15年ぶりにライブハウスのステージに立ち、少しだけ歌った。
終わってみれば自分のクオリティには悔やまれることばかりで、よく恥ずかしげもなくあんな場所に上がったもんだと自己嫌悪。
しかし
すごーく、楽しかった。
音楽がいかに良いものか、どんな音楽のどんなところが好きなのかを書いてもフーン感が満載になるので今回は我慢。
それよりも、ライブに出るまで、そして出たあとの一連の流れから得るものがとても多かったので、そのことについて書きたい。
ことの発端は一年前。
大学のバンドサークルの同期で、当時部長だったベーシスト(二児パパ・大手メーカー)の友人が、仲間3人に声をかけてスタジオに通い始めた。
3人は
プロのドラマー(プレパパ・新婚)
ギタリスト(三児パパ・金融マン)
ボーカル(二児パパ・金融マン)
であり、ドラマー以外は私同様、15年のブランクを持つメンバー。
そこに元部長が連れてきた経験豊かでスキルフルな先輩キーボーディスト(こちらもパパ・グローバルIT)が加わり、楽しげなジャムセッションが定例化された。
おお、懐かしいメンバーで面白そうな動きがあるなぁと思って横目でFacebookを見る(完全に他人事)
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当時の仲間の飲み会に誘ってもらい、何度目かに参加(音楽トーク楽しい)
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「そのうち巻き込むからねぇ〜」と元部長に予告をされる(またまた冗談を)
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今度ジャムるからおいでと言われたけど行けなかったら、写真と動画がたくさん送られてくる(なんだよ気になっちゃうじゃないか)
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「ライブが決まったんだけどコーラスが足りないらしい。お願い、一緒に出ない?」と愛する友人(三児ママ:ギタリスト妻)に言われる
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えーーーーーーっ・・・
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あれ?ステージに立ってる私。(←今ココ。)
すべては元部長の戦略である。
まんまとやられた。
まんまとやられたと言っていたのは私だけではない。
皆が「なんか元部長がアツいからさー、いつの間にかこんなことになっちゃってもーっ。」的なことを言ってた。
でも全員笑っていた。
残業を切り上げてスタジオに通い、睡眠時間が4時間ほどの日が続くメンバーがいたり、
夜中までYoutube音源の投げ合いがLINEグループで繰り広げられたり、
ライブの当日朝まで個人練習に入るメンバーがいたり、
仕事あるいは家庭を持ちながら趣味に時間を割くことは、なかなか大変だ。
でも、
ある人は忙しく仕事がキツいほど楽器を持った時の解放感がすごいと言い、
ある人は自分がブラックミュージックが好きで好きで仕方ないことを改めて認識したと言い、
ある人は15年ぶりの本気ステージを見た家族の、自分を見る目が劇的に変わったと言った。
この状況を作り出した元部長、すごいなぁと純粋に思う私。
冷静と情熱と道化の間を行ったり来たりしている彼の、一年をかけ人を巻き込み導く力に感服する。
以前有名なコミュニティマネージャーにお話を聞いた時に、良いコミュニティの条件は
・上下関係がないこと
・出入りが自由であること
だと仰っていたのだが、それを知ってか知らずか(いや絶対知らないだろ)彼を中心にその条件を満たすコミュニティになっていることも面白い。
人生100年時代の、サスティナブルでフレキシブルな“会”(メンバーが固定される“バンド”ではないそうだ)だというこのコミュニティ。
私は次いつスタジオに顔を出すのか、果たしてスキルを磨くために練習するのか、またステージに立つことがあり得るのか。何ひとつわからない。
でも、「今日ちょっと時間できたから行くわ!」とフラッと参加したら、きっと喜んで迎えてくれて、その日の練習曲を私が参加できるようにカスタマイズしてくれるのだろう。
そういう居場所を持てることの、なんという幸せ。
そして、ライブに向けて何度か家を空けた私を快く送り出してくれ、当日も見に来てくれた夫と子供たちに感謝。
23時、ヒールをコツコツ濃いめの化粧で帰宅する二児の母に、眉をひそめる人もいるだろうか。
いやひそめてもらって構わないや。シワが増えるのはそちらですし。
すべては文脈。前後関係があった上でのその瞬間。
そこの想像力を失った大人にはなりたくない。
自由さえ、文脈。
閑話休題。
もし、私って何が好きで何者なんだっけ?と思うようなことがあったら、自分の冷蔵庫の奥を漁ってみることをおすすめしたい。
きっと何かが凍りついてるから。
そしてフリーズして時間が止まってるなら、賞味期限は意外と長い。
いつでも温め直したら良いのです。